症例報告・カルテ:T.Y様 (56歳)
症例報告・施術カルテ
右肩・左手首の痛みに対する姿勢アプローチと運動連鎖に基づく改善計画
- 主な訴え:右肩の痛み、夜間痛、左手首の痛み
- その他症状:腰の痛み(動き始め)、左側の腰痛
- 発症のきっかけ:明確な原因は不明
- 痛みが強まる時(増悪因子):右肩を下にして寝る、右肩を横に開く・後ろに回す動作、旋盤での重い製品のセット(左手首への負荷)
- 楽になる状態(寛解因子):アイシング、仰向けで背中にタオルを入れる、下方後方肩甲上腕関節伸長エクササイズ
- 日常生活(ADL)への支障:右肩の夜間痛で目が覚めてしまう、寝返りが打ちにくい
- 仕事への影響:旋盤での製品セット時に左手首に強い痛みが走る
- 姿勢の特徴:猫背、スウェイバックポジション(骨盤が前方へシフトし、体幹が後方へ傾く姿勢)、腹圧の抜け
- 関節の動き(可動域):右肩外転(横に上げる)が90度以下、結帯動作(背中に手を回す)はS1〜L5レベルまで制限
- 痛みの引き金(誘発動作):右肩を横に広げる動作、背中に手を回す動作
- 動きが楽になるテスト:仰向けで胸椎(背中)にタオルを挟む、壁を使った肩関節の伸長ストレッチ
- 筋肉の状態:背中や肩甲骨の外側にある筋肉に圧痛。背部起立筋およびヒラメ筋(ふくらはぎ)に過剰な緊張あり
- 左右のバランス:過去に左肩の凍結肩(五十肩)の経験あり。今回は右肩に症状が集中
姿勢・見た目の変化(Before / After 印象評価)
| 観察部位 | Before(当初の状態) | After(介入後の印象) |
|---|---|---|
| 頭部(首・頭の位置) | 見た目上、前方へ突き出ている | 頭の位置が後ろに戻り改善傾向 |
| 体幹(姿勢全体) | 後方へ寄りかかり、腹圧が抜けたスウェイバック姿勢 | 軸がまっすぐに立ち上がった状態へ改善 |
| 骨盤 | 骨盤全体が前方にシフト(突き出ている) | 本来の後方位置へ戻り、安定感が増している |
-
現在の主要な問題:
- 右肩の急性期の痛みと可動域の大幅な制限
- スウェイバック姿勢に伴う体幹機能(お腹の力)の低下
- 左手首への局所的な負担増による疼痛
-
なぜ痛むのか(仮説・運動連鎖):
足首(ヒラメ筋)の硬さが原因で骨盤が前にずれ、それを補うために猫背(胸椎の後弯)とお腹の力が抜けた姿勢(スウェイバック)になっています。背中が丸まることで、肩甲骨の動きが悪くなり、右肩関節自体に無理なストレスが集中してしまいました。
また、左手首の痛みは、過去に痛めた左肩の動きをカバーするために、手首を過剰に使いすぎたこと(代償動作)が原因と考えられます。 -
背景にある要因:
持病による血糖値の高値は、筋肉や関節包などの組織を硬くしやすく、回復を遅らせる要因になります。この柔軟性の低下がある中で、旋盤作業などの重労働が重なったことで痛みが引き起こされています。 - 注意すべき点:糖尿病性関節症や、首(頚椎)からくる関連痛の可能性も考慮して経過を見ていく必要があります。
- 本日の実施内容:仰向けで胸の骨(胸椎)を伸ばすアプローチ(タオルを挿入)、および肩甲骨の位置調整を実施。
- 目的:丸くなった背中(胸椎)を伸ばしやすくし、右肩関節の中のスペースを広げることで痛みを和らげます。また、抜けていた腹圧を入りやすくします。
【ご自宅で取り組んでいただくセルフケア】
- 壁を使った下方後方肩甲上腕関節伸長エクササイズ:壁を使い、手の角度を3パターン変えながら肩の後ろから下を優しく伸ばします。
- コッドマン体操(振り子運動):力を抜いて腕をだらりと下げ、振り子のように軽く揺らす体操。関節を緩めます。
- 生活指導:痛みが強く熱感がある時はアイシング。呼吸時にお腹を意識し、腹圧を維持するよう心がけてください。
- 次回評価方針:「右肩の夜間痛」がどの程度減っているか、今回の良い姿勢アライメントがどのくらい維持できているかを確認します。
- 患者様のご希望:痛みを気にせずに仕事に集中したい、夜に痛みを気にせずぐっすり眠りたい。
- 阻害因子(注意すべき点):長時間の残業による身体への負荷蓄積、血糖値高値による組織回復スピードの遅れ。
- 短期目標:右肩の夜間痛を消失させ、睡眠の質を向上。左手首の痛みを和らげる。
- 中期目標:右肩が本来の範囲まで動くように改善。崩れてしまっているスウェイバック姿勢を正しい位置で維持できるようにする。
